【超具体的】すべらない話の作り方
すべらない話がウケるかどうかは話の出来具合と喋り方の上手さで決まると思うんですが、ここでは前者を重視します。後者は口で説明できるほど単純なものではないので触れません。
素人の僕らでも簡単に作れるのが思考露呈型の話です。
思考露呈型
どういう話か
思考が言動や行動に現れてしまうことをオチとするタイプの話です。明確なオチがあるので、多少喋りがぎこちなくてもしっかりウケることができます。
具体例
例1
高校のクラスにジョンってやつがいたんですよ。ジョンは韓国からの留学生だったんですけど、日本語めっちゃ上手くて、性格もめっちゃ明るくて、もうクラスのみんなとすごい仲良かったんですよ。
そんなかでも、僕は特にジョンと仲良かったんですよ。で、ある時ね、僕、韓国で、AVの規制がめちゃめちゃ厳しいっていう話を聞きましてね、こいつはいいや!と思って、ジョンに日本のAV紹介してやったんですよ。
そしたらジョンはもう日本のAVにどっぷりハマって、僕ら毎日毎日、昨日はアレで抜いたとか、明日はアレで抜こうとか、そんな話ばっかりしてたんですよ。
で、ある日ね、国語の授業で一人一文ずつ教科書を音読する、ってなったんですよ。一番端のやつから順番に音読してってね、で、ジョンの番来たんですよ。ジョン、ファッて立ち上がって、おっきい声で、「彼はその時『あくめき』にあった」って読んだんですよ。
僕はそれまでぼーっと聞いてたんで、ん?あくめき?ってなったんですよ。あくめきってなんだろと思って教科書パッて見たら、「絶頂期」って書いてあったんですよ。(アッハッハッハッハ)
例2
僕、三個下に弟がいるんですけど、こいつがめっちゃ賢いんですよ。なんか、勉強ができるというよりかは頭の回転が速い、みたいな。とんちクイズとかやらしてみてもスッスッと答える感じの。
こいつ小二ぐらいの頃まで結構虫歯あったんで、定期的に歯医者通ってたんですよ。でまあ僕もたまに付いてくんですけど、あの、歯医者って「痛かったら左手挙げてくださいね」みたいに言われるじゃないですか。で、こいつ痛いの嫌いなんで、すぐ挙げるんですよ。ピーンピーンて。僕は我慢せえよ、と思うんですけど、まあ小学生だししゃあないかという感じで。
でまあその日も歯医者一緒に行って、弟いつも通り左手ピーン挙げて、そんで家帰ったんですよ。で飯食って適当に遊んでたら父親帰ってきたんですよ。「ただいま〜」がいつもより元気なかったんで父親の顔フッて見たら、えらい暗い顔してるんですよ。母親が「どうかした?」って聞いたらね、父親、「リストラされた」って言ったんですよ。
僕も母親も驚きでなんも言えなくて、どうしよどうしよ思って弟の方パッって見たら、弟、左手ピーン挙げてたんですよ。(アッハッハッハッハ)
賢すぎて、リストラが「痛い」ものだっていうことが分かったんでしょうね。
はい、こんな感じです。
例1だったら「AVの見過ぎで『アクメ』という当て字を読みだと勘違いする」という思考過程が「教科書の音読」という行為に現れているし、例2だったら「痛い時には左手を挙げればいい」という思考過程が「父親のリストラに対して左手を挙げる」という行為に現れています。
作り方
こういう面白い場面にしょっちゅう遭遇できればいいのですが、大抵の場合そうはいかないと思います。無いなら作ろう、ということでゼロから作ってみましょう。上の二つの例も、僕が勝手に作ったフィクションです。まずはオチから考えます。思考露呈型の話を作る時は「条件付け」を考えるといいかなと思います。
犬に鈴を鳴らしてから餌を与える、ということを続けると、犬は鈴の音を聞いただけでヨダレを垂らすようになる、という研究があります。「鈴→餌→ヨダレ」が条件付けされて「鈴→ヨダレ」となってしまっているのです。思考露呈型の話では、飛躍した「餌」のストーリーを想像することによって笑いが起こります。
例1については最初、「アニメで漢字を勉強していた外国人が、ある漢字をアニメの当て字で読んでしまう」という形を考えていました。つまり「漢字→アニメ→当て字」が「漢字→当て字」というふうに飛躍してしまうということです。「強敵→北斗の拳→トモという当て字」とか、「鬼→グラップラー刃牙→オーガという当て字」(これは普通に面白いですが)とか、色々考えたんですけど、インパクトに欠けたり、作品がマイナーだったりして悩んでいました。そんな時にふとAVという発想に至り、すぐに「アクメ」という当て字を思いつきました。「絶頂→AV→アクメ」が条件付けされて「絶頂→アクメ」というふうに飛躍してしまった、というストーリーです。
例2については、痛かったら左手を挙げるってシンプルで使えそうだな、と思ったのが始まりでした。「痛い→歯医者→左手」が「痛い→左手」になったら面白いなと思うわけです。それではじめは「転んで膝を擦りむく→歯医者→左手」とか、「タンスに足の指をぶつける→歯医者→左手」とかを考えたんですけど、途中で心理的な「痛い」の方が面白いのではないか、という考えが浮かび、この話が出来上がりました。
二つの例から分かるように、思考露呈型の話を考える過程は、大きく二つに分けることができます。それは、「〇〇→〇〇→〇〇」の型を決める段階と、「〇〇→〇〇→〇〇」の赤部分を決める段階です。
例1では
・「漢字→AV→当て字」という型
・「漢字」の具体的な内容(ここでは絶頂)
例2では
・「痛い→歯医者→左手」という型
・「痛い」の具体的な内容(ここでは父親のリストラ)
という二段階です。一段階目と二段階目のチョイスはどちらもセンスが問われます。
プロの例
最後に、実際の芸人による思考露呈型の話を紹介していきます。
ほっしゃん
「双子二回叩く→同じ顔を二回叩いたと思う→次の人から二発」が「双子を二回叩く→次の人から二発」に。
兵動大樹(30:49〜「職業病」)
【破壊力バツグン】兵動大樹のすべらない爆笑トーク15選(被りなし)
「ロープ→警察という職業→くぐる」が「ロープ→くぐる」に。
正直、すべらない話をマスターするために一番大事なのは、プロのすべらない話を何回も観ることです。すべらない話を観るのが退屈だ、という人は話す側にも向いていないので諦めましょう。以上です。ご清読ありがとうございました。